感情に背いた表情が出来る人 ~感情労働への感謝~
昼休みにイタリアンのランチに行ったときの話です。
私は一人で店に入ったので、キッチンの目の前にあるカウンター席に座りました。
12時過ぎに入ったため席に座るのを待つ人が居るほど混雑しており、
次々に飛び交うオーダーに応えるため、
キッチンに立っているシェフやホールの人があわただしく動いています。
私はサラダとライスをおかわりしようと、目の前に居たシェフに声をかけました。
すると、
「サラダとライスのおかわりですね。かしこまりました。」
と柔らかな笑顔を浮かべて言いました。
セルフだけ切り取るとありふれた接客に思われますが、
シェフは作業の手を止め、私の目を見つつ、両手で皿を受け取っていました。
手元が忙しい状況にもかかわらず、
そこまで丁寧に接客が出来る点で、素晴らしいと思いました。
しかし、私は気になることがありました。
そのシェフは「いま忙しくて大変だ」という感情を殺し、
私のためだけに笑顔を作ったのではないかと勘ぐってしまいました。
つまり、仕事において、
思っている感情とは異なる表情を作ることがしばしばあるのではないかと思ったのです。
気になってネットを調べてみると、「感情労働」という概念がありました。
「感情労働」とは、相手(=顧客)の精神を特別な状態に導くために、
自分の感情を誘発または抑圧することを職務にする、
精神と感情の協調が必要な労働のことをいいます。
代表的な職業として、飛行機の客室乗務員(CA)、看護師、介護士などが挙げられます。
この他にも、接客が必要なウェイトレス、ホテルマン、電話オペレーターなどが「感情労働者」に該当し、最近では医師やカウンセラーなども感情労働が求められるようになってきています。
「感情労働者」は、客の非常識なクレームや嫌がらせに対しても、自分の感情を押し殺し、
礼儀正しく振る舞うことが求められます。
感情を過度に抑圧することにより、ストレスをかかえることがあるそうです。
私はストレス耐性が低いので、嫌だと思ったら嫌そうな表情をしますし、
怒りに耐えるのが苦手です。
なので、接客業には向いていないと初めから思っていました。
私はそのシェフの素晴らしい接客を受けたことで、
自分が普段受けているサービスが、誰かの感情の犠牲の上に成り立っていることを理解し、
常日頃、私たちに心地よいおもてなしをしてくれることに感謝しようと思いました。
いつもありがとう。