ゼロから学ぶ卒業論文の書き方講座 ~なぜ卒業研究をやるべきなのか?~
過去2回にわたって卒論の書き方を紹介しましたが、
そもそも、なぜ卒論を書くのか腑に落ちないで嫌々やっている人が
自分の周りにも多かった気がします。
そこで、今回は話を原点に戻し、
なぜ卒業研究をやるべきなのか?
という疑問のもと、社会人になって卒論が役立ったことをお話しようと思います。
卒論に対するネガティブな意見
私が大学4年生だったときによく耳にしたのがこんな意見。
- 卒論ダルい
- 全然進んでない
- やる意味ない
- 何書けばいいか分からない
まあ確かに気持ちは分かります。
課題なんてほとんどダルいものです。
でも、社会人になって役立ったと思うこともあります。
社会人で役に立った能力5選
具体的にどんな力が向上し、どんな場面で役に立ったのかを紹介します。
私が役に立ったと感じたのは以下の5つの能力です。
①課題解決力
研究というのは疑問から始まり、自分の手で調査し、
新たな知見をアウトプットするものです。
論文の中ではもっと細かくセクションが分かれていますが、
仮説検証型(一般的な論文)の場合、
仮説→分析→考察→提言の4つのステップに分けることができると思います。
この4つのステップ、PDCAサイクルに似ていると思いません?
- 達成したい目標と計画を立てる(Plan)
- 計画に沿って実行する(Do)
- 実行した結果と計画を照らし合わせて評価する(Check)
- 評価をふまえて次にどう活かすかを考える(Action)
仮説検証型の論文とPDCAサイクルを用いた業務の両方で、
課題へのアプローチの仕方、解決に至るまでのプロセスが共通していると思います。
業務にしても筋トレにしてもブログにしても、
何かを課題があるときには自ら動いて解決できる能力が活かされます。
②論理構成能力
研究の進め方の記事では論文の構成に沿って説明しましたが、
その論文の構成を組み立てる能力が活かせる場面があります。
例えば、資料をもとに相手を説得するときです。
- 今こういう問題が生じていて、
- その問題が生じている理由はこうで、
- このような解決方法があり、
- 今後こんなアクションをすべきだと思います。
ということを説明するときに、
一連の流れの中でロジックをしっかり組み立てる必要があります。
まずは全体をどのような流れにするか、
そして全体が論理的になるためにはどんな要素を主張すればいいか
をより深く考えるようになりました。
③批判的思考力(クリティカル・シンキング)
「批判」というと相手を非難するようなイメージがありますが、
批判的思考は決してネガティブなものではありません。
批判的思考とは、より良いものを生み出すために、
主張の根拠に対して「本当にそうなのか?」と問いかけることで、
客観的な視点で評価することです。
批判的思考力の汎用性とプロセスの詳細についてはこちらの記事が参考になります↓
卒業研究はたいていの場合、同じ研究室のメンバー全員と同時に行なうと思います。
私の場合は、15名ぐらいのメンバーの中で3つのチームに分かれ、
他の人の研究内容を毎回聞いていました。
その際、
- ベースとなる理論と矛盾がないか?
- 因果関係に誤りがないか?
- アンケート項目は正しいか?
などといったことを考え、思ったことがあれば発言していきました。
逆に自分が批判されたこともあります。
その時は「こんな視点もあったのか~」と気付き、
改めて資料を調べなおして説明を付け足しました。
社会人になってからは、自分や他人の成果物に対してレビューすることが多いので、
この批判的思考が役に立っています。
(例えば他人が作ったプログラムに対する指摘など)
④文章力
ブログを書いていて思うんですが、
長い文章を書くにはそれだけ言い回しのバラエティー(種類)と
ボキャブラリー(語彙)が要ると思います。
内容が違っても同じ言い回しでは単調な文章になってしまうので
言い回しを変えてみたり、
同じ内容でも表現を変えたりしています。
私が卒業論文を書いたときは
確か最低2万字、wordで20ページ以上という決まりがありました。
それだけの文章量を1つのドキュメントとして読んでもらうには、
やはり先ほど言ったような工夫が必要です。
一度2万字のドキュメントを書くと自信になり、
800字くらいの文章を書くのは楽勝になりますよ。
(文字数に対する苦手意識がなくなるという意味で、
これでも上手い人と比べたら自分の文章はまだまだ下手です。)
⑤プレゼンテーション能力
最後に挙げるのは、よく社会人で必要だと思われがちなプレゼンテーション能力です。
研究の発表会が無かったという人もいますが、
私の学部は全員発表していました。
12分の制限時間の中で自分の研究内容を伝えるというのは意外と難しくて、
練習しているときは時間オーバーになることがありました。
論文ってとても長いんで、
プレゼンの聞き手にとって要らない情報が結構あるんですよね。
なので、聞き手にとって必要な情報がどれなのか精査して、
発表内容を修正していきました。
社会人になってからプレゼンの機会はそこまで多くないですが、
いざやると決まったら学生時代に学んだことをもとに練習しています。
卒論を通じて自分と向き合う
ここまで、社会人になってから卒論が役立ったと思う能力を5つ挙げました。
研究をしていると、これらの能力が足りなくて上手くいかないこともありました。
でも、上手くいかない自分と向き合って試行錯誤することで成長するんだと思います。
結論:卒論では多くのことを学べる
大学って講義はたくさんありますが、講義はインプット主体で、
アウトプットは課題と試験のみだと思います。
それに対して研究は、インプットとアウトプットを交互かつ自立的に行なうため、
以上に述べた能力、特に課題解決力が伸ばしやすいと感じました。
卒論を「必要ない」と判断してテキトーにこなすか、
きちんと課題と向き合って成長するかはあなた次第です。