なぜこの世界は生きづらいのか?

アダルトチルドレンとして 世の中で生きることの辛さや、 思うことを綴ります。

ゼロから学ぶ卒業論文の書き方講座 ~研究の進め方 前編~

先日知り合いの大学4年生から

「卒論の書き方が分からない」という相談を受けました。

 

卒論を提出する時期は12月~1月が多く、

今頃どう書こうか悩む人が多いかと思います。

 

私は論文を読むのも書くのも好きですし、

データから考察するのも、文章の構成を組み立てるのも得意です。

 

指導してくれた研究室の先生にはとても分かりやすく手法を教えていただき、

親身にアドバイスを下さいました。

 

今回はそのときに得たノウハウを記事で紹介したいと思います。

 

ただ、私は経営学部出身なので社会科学の分野(文系のほとんど)に限定されますが、

学術論文の基本的な書き方はどれも同じだと思います。

 

社会科学とは異なる分野で詳しく知りたいときはその道の人に訊いてください。

また、この記事はあくまで私が考えた方法論なので、

別途指示がある場合はそれに従いましょう。

 

どうやってテーマを決めるの?

まず初めに、研究テーマを決めなければなりません。

テーマというのは研究する上でのモチベーションになるからです。

 

どのようなことをテーマにすべきかというと、

社会的に関心の高い話題であり、かつ未解決の問題であることです。

 

例えば、スマートフォンの普及、SNSの普及、サーバント・リーダーシップ、

購買行動、モチベーション、リアリティ・ショックなどなど・・・

 

世の中で問題とされていることと自身の興味のある話題を結び付けます。

 

じゃあ社会的に関心の高い話題ってどうやって見つけるのか?

という話ですが、

ニュース記事他の人の論文からインプットしましょう。

 

日経テレコン日経ビジネスオンラインのようなサイトにネタはたくさんありますし、

論文集でタイトルだけ見て面白そうなものを片っ端から読んでいきました。

※ちなみに私が参考にしたのは組織科学という学術誌です。

 

まだこの時点ではテーマがコロコロ変わってもOKです。

私の場合は2回ぐらい全然別のテーマに変えちゃいました。

 

インプットなしにアウトプットなし。どんどん論文を読もう。

 

過去に学ぶ(先行研究のリサーチ)

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テーマがだいたい決まったら同じようなテーマの論文を読んで、

今までの研究でその問題がどこまで議論されているのか知りましょう。

 

「俺の考えたテーマは今まで絶対に誰もやっていない!」

と謎の自信を持っていたとしても、

残念ながらどんなテーマも既に研究されていると思っていいです。

(それぐらい議論が飽和している。ネタ切れ感半端ない。)

 

なので、大人しく過去(先行研究)から学ぶべきです。

 

先行研究をするコツは2つあります。

読んだ論文の参考文献から芋づる式に読んでいく

論文の最後には必ず参考文献の一覧が載っているので、

その中から類似している論文を選んでネットで調べます。

 

ネットで見れない論文や本の場合も多いですが、

無理せずネットで見れるものを読んで、

それでも知識が足りなかったら図書館などで著書を探すといいと思います。

 

自分だったらどう研究するかを意識する

論文を読んでいるときは、問いと結論を明確にします。

「この論文では何と何の因果関係を説明しているのか?」

「問いに対するアンサーは何なのか?」

は必ず整理しておいてください。

 

その上で、「自分だったらどう研究するか」を意識します。

具体的に言うと、研究対象の

  • 産業を変えてみる(IT業界→医療業界)
  • 母集団を変えてみる(会社の従業員→学生)
  • 時代を変えてみる(2000年代→2010年代)

というようにオルタナティブ(代替的)に他の観点を考えます。

 

ロジックも分析手法も先行研究と同じだったとしても、

分析の観点が違えば新規性が生まれ、オリジナリティになります。

 

「今までは〇〇の観点でしか研究されてこなかった。

だから私は××の観点でやることにした。」

と言うと説得力があります。

 

オルタナティブに思考しながら論文を読む

 

論文の真髄は問いにあり

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「良い論文というのは問いの切り口が良い」と先生に言われました。

 

1本の論文というのは、ある1つの因果関係の証明に過ぎません。

その証明が束になることで社会問題が解明されるのです。

 

なので、先行研究のレビューまでで明らかになった問題意識を

さらに具体化する必要があります。

 

研究の背景は広く、問い(リサーチ・クエスチョン)は針のように鋭いのが理想です。

 

例えば私の論文の場合は、

  • 近年スマートフォンが急速に普及した(背景)
  • ガラケー時代は研究されてきたが、スマホ時代はいまだ研究されていない
    (問題意識)
  • 2008年以降において通信キャリアの研究開発は、
    企業パフォーマンスにどのような影響を与えるのか(問い)

という感じです。

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いきなり問いを考えるのが難しい場合は、

①背景 ②問題意識 ③問いを簡潔に書き出してみるといいと思います。

先行研究のレビューまでで持っている問題意識を、

1つの因果関係まで具体化しましょう。

 

背景は海のように広く、問いは針のように狭く

 

あなたの論文は何タイプ?

問いの設定まで出来たら、どのようなアプローチで分析するのかを考えます。

そのためには、自分が書こうとしている論文をどんなタイプにするのか

決めておく必要があります。

 

学術論文は、大きく実証研究ケーススタディに分けることができます。

他にもレビュー論文や理論論文がありますが、

学士の論文では一般的ではないので省略します。

 

実証研究

個々の現象・事象を定量に分析することで、理論的知見を得るための研究。

アンケートやデータベースのデータを元に、統計分析をしているものがこれに当たります。

統計分析するため、相当数のサンプルは必要です。

 

ケーススタディ(事例研究)

ある具体的な事例を挙げ、そこから理論的背景や一般論を明らかにする研究。

実証研究が定量的なのに対し、こちらは定性的な分析をします。

なので、インタビューなどで当事者のことを

より深く掘り下げていくような論文をよく見ます。

 

成功事例でも失敗事例でも、問題が生じた状況や課題解決の方法は

企業・集団によって違うはず。(1から100まで全く同じ事例は存在しない)

 

その様々なシチュエーションにおいて、

なぜ成功(失敗)したのか?

について先行研究で提唱されている枠組みを利用しながら考察し、

そこで得られた知見を今後の課題に生かしていこう

というスタンスです。

 

以上の2タイプのうち、どちらで進むのか決めましょう。

 

タイプの決め手は、統計分析する必要があるかどうかです。

例えば「ある企業の利益が増加した」という事象を2つのタイプで考えてみます。

 

実証研究の場合

利益が増加した要因を探るため、要因になりそうな指標を用意し、

重回帰分析を行なう。

その結果、要因が判明し、その要因と結果の因果関係が証明される。

 

利益に貢献したヒット商品にスポットを当て、

その商品を開発した人にインタビューする。

複数人のインタビューの内容から、開発プロセスでの共通した工夫が見つかり、

その工夫をすると上手くいくという一般論に導く。

 

こんな感じに、タイプによってストーリーはだいぶ変わります。

自分がどんなストーリーを作りたいのか、

仮説検証の前に決めておくと調査しやすくなりますよ。

 

アプローチの方法でストーリーが変わる

 

後編に続く